タイパを求める時代、少しでも効果の高い学習法を求めたくなるのは当然の流れです。ということで、学習効果の高い勉強法を考えてみましょう。
学習効果を考えるうえで、まず最初に思い浮かぶのが「ラーニングピラミッド」でしょう。ラーニングピラミッドは、アメリカの教育学者エドガー・デールが1946年に提唱した「経験の円錐」という学習体験の分類に、それっぽい数字が添えられたものです。その定着率が学術的に証明されたものではないですが、納得感を持って世間に広く広まっているものなので、ここでは考えるきっかけとして使わせていただきます。
ラーニングピラミッド

こちらが「ラーニングピラミッドを画像にして」と出力された画像です。ピラミッドの頂点と底辺のどちらを上に見るかはそれぞれの印象が変わりますが、「講義」を頂点に持ってきたこの図は、どことなく「氷山の一角」のイメージ図を思わせます。さておき、このラーニングピラミッドを手掛かりに、学習効果を高める要素を探っていきましょう。
1.主体性の有無
最もよく目につく効果を高めるポイントは「主体性」です。
要は「自分の意思を持って動くのか・持たないでも動いていくのか」の違いです。
「ラーニングピラミッド」の項目で言うと
・主体性がなくても動く(受動):講義、視聴、観覧
・主体性がないと動かない(能動):読書、討論、体験、教授
だから、主体性を持って動く方が学習効果が高いと言えそうです。
また、「討論」「体験」「教授」あたりを「アクティブラーニング」と言われて、2010年代に学校教育のなかで急速に広まっていきました。
2020年から実施されている学習指導要領では「アクティブラーニング」という表現から「主体的・対話的な学び」という変更されていて、高校で行われていた「総合的な学習の時間」も2022年から「総合的な探求の時間」と名前を変えています。
いずれにしても、「主体性」を重視している動きの中にあります。
2.意欲の有無
この項目は分けて書くべきか迷いました。どちらからと言うと「1.主体性」の土台とも言えるものだからです。
「意欲」がないと何をやっても身につかないものですが、ピラミッドの上のほうであれば形だけ整えるばかりになり、下に行けば行くほど「意欲」が無いとろくな結果にはなりません。
「ラーニングピラミッド」の項目で言うと
・意欲がなくても流れていく:講義、視聴、観覧、グループ討論
・意欲がないと進まない:読書、個人討論、体験、教授
また、「やる気」や「意欲」は「動き出さないと出てこない」などとも言われるように、動きの大きなことをやる始める方が「意欲」は湧くものです。
この「動きの大きさ」に関わることを次の項目で見ていきましょう。
3.アウトプットの有無
こちらも分かりやすい基準です。
情報を「入れる:インプット」のみか、情報を「出す:アウトプット」まであるかの違いです。
「ラーニングピラミッド」の項目で言うと
・インプットのみ:講義、読書、視聴、観覧
・アウトプットも:討論、体験、教授
こう分析すると、この項目が最も「ラーニングピラミッド」の順番に沿っています。
それであれば「主体性」や「意欲」より先「アウトプットの有無」を書くべきですが、私自身が「形」より「中身」を重視したい気持ちが強いためこの順序にしてみました。
この先は何かの有無ではなく、数の多さの項目を見ていきます。
4.自分でする行動の数
行動の数とは、例えばピラミッドの上から4つを見てみると、
・「講義」は「聞く」で「理解する」という行動のみで、
・「読書」は「読む」で「理解する」という行動のみだと分析できます。
・「視聴覚」は「見る」と「聞く」で「理解する」という行動になり、
・「観覧」は「見る」と「聞く」だけではなく、「匂う」など感覚に関する行動も介して「理解する」という行動と、
行動の種類が増えていることが分かります。
(もちろん、各項目「理解する」という項目は、とんでもなく奥深いことなので、そのあたりを詳しく掘ることはここでは割愛いたします)
さらに、「討論」「体験」「教授」になると、
他者からの情報の受け方だけではなく、「自分の考えを練り」「発言する」などなど、自分の行動の種類も圧倒的に増えていきます。
その数(回数・種類)によって、より深く自分の中に知識が定着していく効果は上がりそうです。
5.刺激の感覚の数と量
感覚とは、分かりやすくは「五感」であり、前項の「行動の数」と重なる面もたくさんあります。
座学の勉強になると、学習の種類にもよりますが、
・文字や動画を「見る:視覚」や、
・言葉や音を「聞く:聴覚」、
・文字を書く「触覚」の一部
ぐらいの感覚しか使えていません。
また、感覚(五感)ではなく、脳への刺激という観点で見ると、
「理解できた喜び」「論理的思考」「相手に伝わった喜び」「満足」なども、
十分な刺激になります。
良質で大きな刺激は脳の活性化に繋がるため、学習効果の高まりも期待できます。
6.関与する人の数
この項目が最も人間っぽさの出るところです。
人間とは「楽したい生き物」であるという前提を忘れてはいけません。
今の便利な世の中はその前提のために人類が努力した結果とも言えます。
さらに「言い訳の天才」でもあるため、関与する人の数も重要な要素となります。
1つには、自分一人では弱くなってしまったときにすぐに「止めてしまう」と決めてしまえます。しかし、誰かの関わりがあれば、「止めない」ためのパーツになることができます。
歩みを止めないことが学習効果に繋がることは、4や5で説明した通りです。
さらに1つには、自分の視点だけではなく、他者の視点を意識できる可能性があります。自分の考え方だけでなく、他の人がどう考えるのか、どこで分からなくなるか、どうすれば分かってもらえるか、など「討論」や「教授」は特に当てはめやすいかと思います。
いろんな角度で考えられるという事は、もちろん脳への刺激の角度が増えることを意味しますし、「討論」や「教授」であれば、また違った角度で3,4,5あたりが満たされることを意味します。
コストとリターンは等価交換
ここまで読んでみて分かった方もいるかと思いますが、「誰にでも当てはまる、すぐに莫大な効果がある学びの方法」と言うものは、現実的には存在しません。
「コストとリターンはバランスが取れているもの」という世の中の基本ルールがありますので、このつまらない結論はむしろ世の中の真理でもある、ということでもあります。
例えば、効果が上がると思って、「5.脳への刺激を増やしまくる」「6.数多くの人に関わってもらう」ということをやったとしても、うまくいかないこともあります。
刺激が強すぎて、疲れてしまったり、ゆるい刺激を感じなくなってしまうリスクがあるでしょうし。
多くの人に関わってもらうためのコストもさることながら、もし失敗したときに「できない自分」を周りの大勢にさらしてしまうリスクがあり、そのために失望されたり自分から離れていくことなどもリスクとして考えられます。
「コストとリターン」という考えと同じように、「リスクとリターン」もバランスが取れていることも世の中の基本ルールです。
最後に、今回は「効果の高い」であり「効率の良い」ではないのがポイントです。
「効率の良い学習法」を考えるときは、具体的な狙い(目標・ゴール・求めるもの)によって全く異なる方法を考えることができます。
が、これは個別具体的な話にならないと語れないことでもありますので、こちらはまた機会があれば、ということで。