「ことば」第8回:決まった言い回しを考える-慣用句などなど
今回は熟語のところでしていた「漢字1文字ずつの意味が分かれば熟語の意味が読める」という話とは逆で、使われている漢字の意味だけではその言葉の意味が見えてこないような表現について考えていきます。国語の授業では慣用句やことわざ、故事成語などといわれる部分です。
[1]慣用句、ことわざ、故事成語など
先ほども言ったように、慣用句などはそのことばの1文字ずつの意味が分かっても、その句としての意味にたどり着けない場合も多いです。なので「分からんのかい」「なんでやねん」と言いたくなるところですが、その代わりにいいこともあります。それは、ことわざや故事成語は特にそうですが、なんらかのエピソードやイメージからことばができているので、一度覚えてしまうと思い出しやすい=暗記しやすいというところです。
これからいくつかことばを挙げますので、その「ことば」から「意味」や「なりたち」を考えながら読んでみてください。自分で考えれば考えるほど、暗記の定着が進みます。
[ことばの説明、の説明](Aの部分が今回のことば)
A「ことば」 → A-1「意味」
↓
B「元のできごと、イメージなど」
C「同じような意味のことば」 D「比べたいことば」
身体の一部を使った表現
令和3年2回目も「腕がなる」が出ましたし、慣用句としても使われることが多いので、第8回では「身体を使ったことば」をメインに取り上げていきます。身体以外の慣用句だと、動物や数字なんかも多いので「動物 慣用句 一覧」とかで調べてざっと見てみると良いと思います。
(1)「手玉に取る」
A-1 思い通りに翻弄する。
B お手玉、ジャグリングが上手い大道芸は自由自在にお手玉を操る。
C 丸め込む、掌で転がす
D 掌の玉:大切なもの
(2)「面の皮が厚い」
A-1 厚かましい。図々しい。
B 周りがどうあれ自分の思い通りのことを進める人は、周りが嫌がった反応をしても本人の表情は少しも変わらない。感情が読み取れない。
→ 表情に出ないほどに顔の皮が分厚い。マスクしているイメージ。
C 厚顔無恥
D 面の皮をはぐ:正体を暴いて、恥をかかせる
(3)「目に余る」
A-1 ①見過ごす事ができない ②ぱっと見渡すことができないぐらいたくさんの
B 視界に入りきらないぐらいいろんなものが広がってしまっている
→ 単純に数が多い/心理的に嫌なことが広がってしまっている
C ①破廉恥な 無茶苦茶な
このBのイメージは合ってる間違っているは関係なく、「慣用句」→「自分なりのイメージ」→「意味」を作ると忘れにくいので、そのためにイメージを広げてください。
慣用句は本当に膨大な量がありますので、とてもではないですが全部は取り上げられないです。高認で出そうだなと思うものを浮かべると、「頭が上がらない」「鼻がきく」「耳が早い」「足が早い」「気の置けない」「胸がすく」などなどたくさん出てきます。
せっかくなので、動物のものも1つ取り上げておきましょう。
動物を使った慣用句
(4)「鶴の一声」
A-1 なかなか決まらないことが、力のある人の一言で決まる
B 鶴は首が長く発声器官が発達しており声は大きく力強くよく響き、遠くまで届く
このように?共通のイメージを得やすい「身体」や「動物」を使った表現は、分かりやすい=慣用句になりやすいのは必然ですね。
終わりに
また、仏教や中国の古い出来事からのできた言葉(故事成語)ももともとの話や自分なりのお話に結び付けてイメージできれば、暗記ははかどります。気になったら調べてみてください!
「矛盾」最強の矛と最強の盾の話 「蛇足」早い絵描きが余計なことを
「羊頭狗肉」このお店何のお店? 「疑心暗鬼」疑いだしたら・・・。
ことばは正しるだけじゃなくて、使ってみようとする気持ちは大事です。ぜひ日常で使ってみて「あいつ言葉知ってるな。かしこか」と思われるように頑張ってみてくださいね!
最後に、せっかく書いたのでメモ代わりに。知っている単語はどれぐらいあるでしょうか。
答えとかは無いですが、確認用にどうぞ。
【その他、出そうな慣用句】(メモ)
・頭打ち ・頭が上がらない / ・後ろ髪を引かれる ・間髪を容れず
・顔が立つ / ・眉に唾をつける / ・鼻息が荒い ・鼻がきく
・いい目が出る ・一目置く ・鬼の目にも涙 / ・肩で風を切る
・眼を付ける ・眼中に無い / ・耳が痛い ・耳が早い ・耳に入れる
・開いた口が塞がらない ・口裏を合わせる ・口がうまい ・口がうるさい ・口が多い
・舌が肥える ・舌が回る=口が回る ・舌鼓を打つ
・歯に衣着せぬ ・歯を食いしばる
・手がかかる / ・腕に覚えがある / ・指をくわえる
・爪に火をともす=爪の長い / ・胸がすく / ・心臓に毛が生えている
・腸が煮えくり返る ・断腸の思い /・肝が据わる ・肝が小さい ・肝に銘じる
・腹が黒い ・腹を決める ・背に腹は替えられない ・自腹を切る
・背筋が寒くなる ・眼光紙背に徹す ・背負って立つ
・腰が重い ・腰が砕ける ・腰が据わる ・腰が強い ・腰が抜ける ・本腰を入れる
・足が重い ・足が付く ・足が出る ・足が遠のく ・足が早い
・股に掛ける / ・膝が笑う ・膝を打つ ・膝を折る(負けを認めて従う)
・体に障る ・体を壊す ・体を張る
・骨が折れる ・骨抜きにされる ・骨身に沁みる
・筋がいい ・筋書き通り ・筋が立つ(言動一致) ・青筋が立つ(怒っている)
・羊頭狗肉 ・肉を切らせて骨を切る
・面の皮が厚い →面の皮を剥ぐ ・一皮剥く 一皮むける=渋皮が剥ける
・肌が合う 息が合う 気が合う(肌=気で使うことも多い) ・一肌脱ぐ=片肌脱ぐ
・血が騒ぐ=血がたぎる ・血と汗の結晶=汗の結晶 ・血で血を洗う=毒を以て毒を制す
・汗を流す 汗になる 汗をかく (汗=頑張りのしるし)
・声が掛かる ・声なき声 ・声を落とす / ・涙に暮れる ・涙を誘う
・息が切れる(息切れ、途中でやめる) ・息が掛かる(権力者とのつながり) ・息が詰まる(重苦しい感じ、緊張)
・気の置けない(心を許して付き合える)
・頭角を現す
〇 動物を使った表現
・人間万事塞翁が馬
・烏合の衆
・疑心暗鬼を生ず(疑心暗鬼)
・鶏口となるも牛後となるなかれ(鶏口牛後)
・羊頭を懸けて狗肉を売る(羊頭狗肉)
・虎穴に入らずんば虎子を得ず
〇 その他の表現
・墓穴を掘る=自らの首を絞める ・業を煮やす ・怪我の功名 ・高をくくる
・渡りに船 ・雌雄を決する ・油を売る ・底が浅い ・棚に上げる
・恩に着せる ・立つ瀬がない ・堂に入る ・旗色が悪い ・路頭に迷う
〇 三字熟語、四字熟語
・真骨頂 ・役不足 ・破天荒 ・門外漢 ・登竜門 ・突拍子
・臨機応変 ・我田引水 ・公明正大 ・大同小異 ・故きを温ねて新しきを知る(温故知新)
〇 故事成語
・矛盾 ・君子危うきに近寄らず ・君子は豹変す ・覆水盆に返らず ・衣食足りて礼節を知る
〇 文章にしてみました
・食事のお誘いはとてもうれしかったが、断腸の思いで断った。
・試験が迫ってきたので本腰を入れて勉強した
・マナブと切磋琢磨しながらゲームの腕を磨いた
・全権を任されていたので臨機応変に対応できた。
・分かりやすいところばかり修正していたら本末転倒になってしまった。
・顔を見れただけでも御の字だ。
・あなたに政治の話なんて釈迦に説法でしたね。
・先にお菓子を食べたんだからごはんがおいしくないのは自業自得ですね。
・彼は言うことが支離滅裂だから、みんな困っている。
・優柔不断な性格なのでいつもチャンスを逃してきた。
・彼は弁が立つので、営業成績がとても良い。
・羽目を外して大けがをしてしまった。
・紆余曲折を経て私はついにチャンピオンになった
・この風光明媚な風景を見れるだけでここに住む価値がある。
・最近のスマホは成熟を通り越して蛇足と言える。
・こんなに素敵になるなんて馬子にも衣裳ですね。
・グルメサイトでも評判だったのに羊頭狗肉だったな。
(サムネにはfirefly(adobe)を使用しています)