「ことば」第5回:熟語と熟語の関係-対義語(単語・熟語part2)

前回の熟語に続いて、今回も熟語について続きをやっていきます。

前回の熟語で、同じような意味の漢字を2字で「温暖」「寒冷」とか、反対の意味の漢字2字で「寒暖」とかありましたが、熟語同士でも同じような意味ものとか、反対の意味のものとかもあります。
今日は、反対の意味の言葉(反対語、対義語)を見ていきます。
同じ意味の言葉(同義語、類義語、同意語)まで見ていきたかったですが、長くなってしまったのでこちらはpart3で
あ、「反対」「対義」という言葉も同じような意味の熟語ですね。

(1)反対語、対義語シリーズ

国語でよく見る熟語

文章読むときに使われるもの

・一方-他方
・前者-後者
どちらも、例や主張を列挙(並べて挙げる)するときに使われる表現です。

対比の構造に使われるもの

・東洋-西洋:「アジア」と「欧米」の文化の違いを表現したいときに使われます。
・過去-未来(-現在):時間の流れで変化を強調したいときに使われます。
・人工-自然、科学-宗教、論理-非論理、理性-感性:「言葉で説明できるもの」と「説明できないもの」の違いを表現するときに使われます。
・主観-客観 主体-客体:「自分ごと」と「他人ごと」の視点の違い。
・潜在-顕在:「見えないもの」と「見えるもの」
・相対-絶対:「誰かと比較したもの」と「それ自体で完結するもの」

文章の構造として

・原因-結果:出来事の「前」と「後」
・抽象-具体 ※これは類義語のところで具体例を挙げながら説明しますね。

これらの対義語が文章の中で使われるのは、対立の構造に持ってって比べたり、話の筋道を立てたりすることで理解しやすくする効果があるからです。
対立の構造を作ったり、真逆の考えを出したりして納得させる方向に話の持ってく論理展開を「二元論」とか「二項対立」とか言われます。わかりやすいのは「善」と「悪」、「正しい」と「間違っている」、「敵」と「味方」なんかは日常的にもいたるところで使われています。そんな風に単純比較することで物事のさわり・表面・入口を理解するにはとても役に立ちます。
しかし一方で、分かりやすいがゆえに、ついつい「そうそう」と思って納得させられたり、分かった感に酔いしれたりして、もっとよく考えないといけないことを隠してしまうことがあります。便利なものにはリスクがあるのは世の常です。この具体例については後で考えてみましょう。

社会でよく見かける熟語

・緯度-経度:世界の中の「南北の位置」と「東西の位置」
両方を使うと地球上の場所を示すことができます(例えば、東大寺の大仏の位置は北緯34度41分21.11秒で東経135度50分23.39秒の位置となります)

・円高-円安:円の価値が「高い」と「安い」
1ドル10円で買える場合と100円で買える場合、1円の価値はどちらが高いでしょうか?というお話。この場合は1ドル10円で買える場合が「円高」、100円も出さないといけない場合が「円安」ですね。

・収入-支出:お金が「入ってくる」と「出ていく」。これが国とか自治体の場合は、歳入-歳出となります。
・債務-債権: ※こちらは後で詳しくお話してみましょう。

数学でよく見かける熟語

・鋭角-鈍角:「鋭い(するどい)角度」と「鈍い(にぶい)角度」
・変数-定数:「変化する数字」と「固定された数字」

こんな感じで文字の意味を理解することで、苦手な科目の理解や暗記の助けになることもたくさんあるだろうし、もしかしたら今挙げた社会や数学、はたまた理科なんかも、言葉が追えれば理解も進んで苦手科目じゃなくなるかもですね。

分かりやすさが隠してしまうものとは?

さて、二元論が深い知識を隠してしまうというお話に戻りましょう。
ここでは債務と債権について考えてみましょう。

まずはさわりの部分としてのStep1です。

Step1としては

債権はお金を貸す側のこと(債権者)で、
債務は借りる側のこと(債務者)という漠然とした理解でひとまずOKです。

もう一歩踏み込んだStep2としては

お金を貸す側が持っている権利を債権といい、
お金を借りた側がやらなければならない義務を債務ということ。
借金の権利なので債権、借金の義務なので債務。
ここまで押さえられていたら言葉の意味としては上々です。
「ちゃんとわかっています」。

債務というのは、ものすごく平たく言うと借金する側のことです。なので、このやらなければならない義務というのは返金、借金の返済のことです。そして「お金を返さないといけない状態」だから「借金は悪いものだ」と教えられている場合、債務に取り巻くイメージは悪いものばかりだと考えてしまいがちです。

では、ここからその二元論で隠されているものを見ていきましょう。

Step3を考えてみましょう

先ほど、借金には悪いイメージが染みついているというお話をしました。しかし、借金にも良い借金と悪い借金があります

良い借金と悪い借金とはなんなのでしょうか?
すごく乱暴に分けると、「お金を生み出すための借金」と「ただただ浪費、消費するための借金」の違いです。この違いリスクとかもろもろ含めて話していくと社会科というか、生き方の授業になってしまうので、「ことば」の講義としてはここで止めておきましょう。

さらに踏み込んだStep4

そして、隠されていることとしてさらにもう一歩踏み込んでStep4として話を進めていきましょう。
これはさらに話がややこしいのでほんとに少し匂わせるぐらいにしておきますが。

少し話のスケールが大きくなりますが、学校の社会科では国の借金=国債だと教えられます。
そして、国債が膨れ上がったから「次世代にツケを残さないように」ときれいごとを言います。これに国民たちも「よくわからないけど借金だからダメなもので、ダメなものは将来の子たちに残してはいけないよね」と分かったつもりでやり過ごしてしまいます。
(ほんとのところは、そもそも将来にツケを残す子供たちを、現在産めないぐらいの社会になってしまっていますが、、。)

この国債というものは、借金みたいな性質ももちろんあるんですけど、私個人が銀行から借金するものとはかなり性質が違う面もあります。
個人が借金をする場合、私自身が債務者となりますが、
国債の場合、債務者は誰で、債権者は誰でしょう?
そしてお金、日本円とは何なのでしょう?誰がどうやって作っているのでしょうか?と考えるとかなり複雑になっていきます。でも、勘の良い人なら「あれ?」と気づくことも出てくるかもしれませんし、「なんかおかしい?」ともやもやを持てた人もいるかもしれません。それが始まりです。

これ以上はほんとに経済理論的なお話に突っ込んでいってしまいますのでここまでにしておきますが、Step4までお話をすると、債務と債権のイメージは最初よりもかなり深みが出たんではないでしょうか。私にもこの国債をどういう風に扱うのがいいのかというのは、完全にわかっているわけではないですし、こうすべきだという主張は持ち合わせてないですが、いろんな視点で社会を見ることに興味があれば「国債 借金じゃない」とか「国債 借金 嘘」とか調べてみれば、これまでと違う知識に出会えるかもしれません。

このように、良いこと/悪いことの二元論では難しいことは隠してしまうのです。そして、それがゆえに、知らぬ間に社会全体が騙されている、、、とまでは言えるかわかりませんが、少なくともどこかに誘導されていることもあるということは知っておいても良いことです。だからこそ、いろんな視点を持って考えたいものです。

債務-債権の対比から、借金の「善」と「悪」の二元論で見えないように誘導されていたことが自覚できた人は幸いですね。そのような気づきが学ぶということなので、これからもたくさんの気づきを得ていけるように進めていきましょう。

(サムネにはfirefly(adobe)を使用しています)

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