「ことば」第10回:数字を含んだ文章
これまで見てきたように文字でいろいろなことを伝えるというのもかなり難しいことだと分かります。ちょっとした表現で伝わるものが違ったり、同じ言葉でも文脈で意味が違ったり、難しい言い回しや漢字があったりと、その難しさも多岐にわたります。
そして今回は、さらに少し違う方向の難しさを考えてみたいと思います。
一番初めに扱った絵のように目に見えるものであっても、いろんな表現の仕方があるので伝えるのはとても難しいことですが、目に見えないものを文字にするのはもっと難しいことは簡単に想像できるかと思います。また、今回扱う数字を含んだ文章は、数字=苦手という意識もあいまってより難しさを発揮してしまう人も多いですね。
数学でも文章から数式を作って問題を解くようなものありますという話になると、「わたし受験で数学使わないからいいの」と答える人もいます。でも、「感覚」よりも「データ」で語るほうが価値の高い世の中になってきていますので、数学は嫌いでも、数字を扱える思考は頑張って身に着けておく方が良いでしょう。「感覚」より「データ」というのは、例えば「結構いい点数だった」というより「80点だった」という方がよりはっきりするように、数字は力の強い文字で、論理的に話すときに分かりやすさをかなり足してくれるものなので慣れておいた方が良いものです。むしろ「嫌い」「必要ない」と避けていくとその先が大変になるかもしれません。
また少し話がそれますが数学的な話と同じく、パソコンとか電子機器についてもプログラムを組めるまでの必要性は職種に寄りますが、最低限として配線関係とか、プログラムとはどういうものでパソコンやAI・人工知能ってどんな仕組みで何ができるのかは知っておくに越したことはないと思います。
ということで、数字やプログラミングの概念など、見えないものの重要性が上がっていますので、数字を扱う文を少しずつ考えていきたいと思います。今回は日常的に使いそうな数字の部分だけしか触れられないですが、苦手意識を横に置いて進めていきましょう。
まずはイメージしやすい文章から考えていこうと思います。
(1)価格に関すること
近所のスーパーの500円のお弁当は、19時を過ぎたら20%引きのシールの上に40%のシールが貼られます
結局何%引きでいくらで買えるのでしょうか。これは具体的なシーンは思い浮かびやすいですが、数字の部分のイメージはどうでしょうか。
全体(500円)を100%として、その10%は50円だから20%引きなので100円引き、残りの80%が代金なので400円(もしくは500円ー100円:100%ー20%)。それが40%(200円)引きになったので、100%のうちの40%引きで60%で300円ということになります。
(20%引き:■■■■■■■■□□)→(40%引き:■■■■■■□□□□)□1つが10%で50円というイメージです。
昨日服を買いに行くとちょうど30%引きの服がさらに20%オフというアナウンスがされていました
こちらはぐっとややこしくなりますが理解やイメージはできますでしょうか。「30%引きから20%オフで50%!半額だ!」となった人もいるのではないでしょうか。これは数字がよく分からない人に何となく半額でお得!とか割引に割引が重ねられてお得!と思わせて購買意欲を盛り上げる意図もあるでしょう。でもこれ、半額にはならないんです。(とはいってもお得に違いないですが、「ちりも積もれば」と言いますから)
ちょっとややこしいですが、同じようにイメージで見ていきましょう。
まずは30%引きなので、全体が100として30%引きで70。(■■■■■■■□□□)
そして、残りの70を全体として、その10%は7だから20%引き14引く。70から14引くので、56ということになるので、50%引きではなく44%引きだったということになります。
もちろん、44%でも50%でもお得に変わりないので詳しく分からなくても大丈夫ともいえるでしょうが、一つ一ついろんな考え方や感覚を理解し、使えるようになっていってもらう方が未来は明るくなります。
(2)点数に関すること
今回のテストは、前回から23点もアップして初めて80点台を取ることができました
これは単純に点数が伸びた(もしくは落ちた)という話だけなので分かりやすいですね。このイメージは、前の点数(□□□□□□)に今回上がった点数を足して80点台(□□□□□□■■)になったという感じですね。これぐらい単純なものはわざわざイメージ化させなくても、文章や数字のまま理解ができる感じかもしれませんね。
このあまりよく分からないものを単純なイメージで捉える方法は、非常によく使えるものです。逆にこれを使いこなさないと、なんとなく分かった風な感じで誰かが意図した方向に流されていくことになります。この分からないものを①単純化してイメージをつかむ→②イメージをつかみながら手順を理解して使えるようになる→③慣れてきたらイメージ化せず文章や数字のまま扱えるようになるところまで頭を、思考を磨いていってください。何においても、自分で理解可能かどうかが大事です。
8月に70点で偏差値52だったが、勉強を頑張ったので12月には70点で偏差値57まで成績が上がった
さて、急に難しいのが出てきました。「偏差値」。偏差値は文字通り「偏っている差の値」で、平均点を偏差値50として、そこから上や下にどれだけ外れているのかを数字で表すものです。だから、基準となる平均点の上下によってで同じ点数(例文では同じ70点)であっても外れ具合が変わるので、得点は変わってないのに平均点や偏差値は上がったり下がったりします。
偏差値のきっちりとした求め方は数学Ⅰで習う部分ですが、計算がややこしく、正確なイメージを持っている人は世の中でも少数派だと思います。この先、どうにもややこしくて自分の感覚でつかめないものもたくさん出てくると思います。その場合には、「分からないからできない」ではなくて、分かる部分だけつかむことはとても大事です。この場合「偏差値50は平均点で、偏差値40はどれぐらいの位置で、30だとどんな感じで、60は、70は」と目印となる部分をなんとなく認識しておく、ぐらいで進んでみてはどうでしょうか。
(3)速さに関すること
100mを10秒で走れるということは、1㎞を1分40秒で走れることを意味しません
100mが10秒なら、1kmは1000mだから100秒で走れ・・・無いことは分かりますよね。まぁ、100mを10秒でも走ることもほとんどの人はできないんですけどね。ただ、短距離と長距離はこんな感じの単純に掛け算できるようなものではないのはわかるかと思います。
時速40kmで90分走ったあと、時速70㎞で120分走ると目的地につきました
こういう文章を見ると、小学算数で暗記したことが頭に浮かぶ人もいるかもしれません。「みはじ」「きはじ」「はじき」というものです。「みはじ」は「みちのり・はやさ・じかん」、「きはじ」は「きょり、はやさ、じかん」、「はじき」は「はやさ、じかん、きょり」で、計算しやすいように配置を暗記するというものです。(分からなかったら、分からないままでいいです。暗記する価値も低いですし、答えを出すのに暗記で対応するは確かに手っ取り早いですが、暗記でできるのはそこまでなので)。
先ほども説明したように、ある程度は感覚として理解して、どうしても理解できないときの最終手段としての暗記なら仕方なしの手としては有りですが、暗記に頼らないほうが当然頭は育ちます。今回の場合は「みはじ」などの言葉の暗記をし、どの文字がどの配置かの場所の暗記をさせて、ようやく公式的に使えるようなものになりますが、それなら前に動画で扱いましたが「単位も計算できる」ということだけ覚えておく方がよほど役に立つと思います(この話は長くなるので以前撮った動画を見てみてください)。
(4)その他いろいろ
明日、奈良市では6時から19時まで降水確率が80%だそうです
すごくよく聞くような話ですが、この文章はどういうイメージを持っているでしょうか。よく考えるとこの80%の意味は分かりそうで分からなくなります。例えば、①奈良市の80%の地域では雨が降るという風にも捉えられますし、②奈良市のどこかで雨が降る確率が80%という風にも捉えられます。
よくよく考えると難しくなっていきますね。こういう細かいところも「どういうことなんだろう?」と一歩踏み込んで考え続けていく姿勢はとても大事です。
景気が低迷し昨年は失業率が7%でしたが、今年は大恐慌の影響でさらに20%の人が失業した
これも解釈はいろんな形でできそうです。
解釈①:昨年の全体を100として7%で7。今年は今年の全体を100として20が失業者。
解釈②:昨年の全体を100として7%で7。今年は失業率が7%+20%で27%で27が失業者。
この%について、年をまたぐと基準となる数字が変わってしまう(昨年の全体の人数と今年の全体の人数がそもそも違う)ので、去年の%と今年の%を比べるときなどは「ポイント」という表現をします。「景気が低迷し昨年は失業率が7%でしたが、今年は大恐慌の影響で失業率はさらに20ポイント増加した」という感じでです。
10から3を5倍してひきました
こちらはシンプルだけど、シンプルだからこそ数字に慣れていないと迷ってしまう文章かもしれません。
数学でも文章題として出題されますが。数学=苦手、文章題=もっと苦手という人も結構いらっしゃいますが、それはとてももったいないことです。文章題を読んで、文字から大体言いたいことがイメージできるなら、数学の問題では出てくる数字は全部使わないと答えにならないことが非常に多いので、それがヒントになります。
なので、①数学の問題文は必要なものしかない(出てくる数値は全部使う)ので、その数字を使って②意味を考えながら式に直す練習をしてみてください。また、さっきも出てきた③単位は計算できる、という事が分かれば、問題文に出てくる数字には単位がくっついてくるので、それをヒントに数式を組むことができるかもしれません(特に高認では物理基礎とか化学基礎みたいなところではとても有効です)。
数学が苦手な人も多いと思いますが、まずは買い物など身近な数字に触れながら頭の中で計算の練習を続けてみてください。アンテナ張っておけば一発では分からなくても、何回も触れることによって「あぁそういうことか」となる日も近いと思います。苦手だと思うものだからこそ、日常のちょこちょこしたところで数字に挑んでいってもらえると良いと思います!こっちから向かっていく気持ちで事態が好転することもよくあることなので、頑張ってみてください!
(サムネにはfirefly(adobe)を使用しています)